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2017年7月24日月曜日

「~かおりを飾る~珠玉の香合・香炉展」 静嘉堂文庫美術館

今回は、二子玉川駅から徒歩20~25分、バス利用(バスの所要時間約10分、バス亭から徒歩5分)もできる静嘉堂文庫美術館をご紹介いたします。交通案内はこちら。
8月13日(日)まで、「~かおりを飾る~珠玉の香合・香炉展」を開催中です。
この展覧会にはぐるっとパスで入場できます。
国宝《曜変天目》(稲葉天目)が会期を通して展示されています。
国宝《曜変天目》(稲葉天目)中国・建窯 南宋時代(12~13世紀)
話題の国宝を鑑賞する絶好のチャンスです。この機会にぜひお見逃しなく。静嘉堂文庫美術館はぐるっとパスで入場できるので、この機会にパスを上手く活用してください。

今回の展覧会では、香を焚く道具「香炉」と、香(香木・練香)を入れる蓋付きの器「香合」に着目し、静嘉堂所蔵の珠玉のコレクションを公開しています。香合は約80件、それに香炉の優品とともに、豪華な蒔絵の香道具も合わせ、約100件を展示しています。香合・香炉のまとまっての公開は、20余年ぶりとのことです。
展示室に入る前のラウンジは窓が大きくて見晴らしが良く、素敵な空間になっています。こちらにも作品が展示されています。
《青磁香炉》中国・南宋官窯 南宋時代(12~13世紀)
ラウンジに展示されているのは世界的にも貴重な《青磁香炉》。
澄んだ青磁釉が数回厚くかけられ、それが焼成後の冷却とともに幾重にもヒビ(貫入)が入って完成した姿は、まさしく人と炎が作り上げた「玉(ぎょく)」です。
香炉・香道具の出品作から見どころといえば以下の3点です。野々村仁清の香炉2点と香道具の「十種香道具(香箱)」です。
重要文化財 野々村仁清《色絵法螺貝香炉》御室窯 江戸時代(17世紀)
京焼で色絵陶器を完成させた野々村仁清。五色の糸を貝にまきつけたかのような彩色を施し、金彩を加えて数度低火度で焼付けて、極彩色の法螺貝香炉としています。
野々村仁清《銹絵白鷺香炉》御室窯 江戸時代(17世紀)
静嘉堂の10年前の展覧会で初公開されましたが、近年ことに注目されている仁清の香炉です。鷺の伸びやかな嘴(くちばし)と頸(くび)、羽根のまろやかな白さ、こちらは彩色を控えめにした作品です。
この仁清の優品2点を見られるだけでも貴重な機会です。
《吉野山蒔絵十種香道具》江戸時代(18世紀)
「十種香道具(香箱)」とは、基本となる十種の組香を催すためにととのえられた香道具のすべてと、その外箱の総称です。
まばゆいばかりの金地に、金・銀の高蒔絵、金属の薄板を貼り付けた金貝技法で、桜花満開の吉野山の風景を描いた、じつに贅沢な一式です。

今回出品されている多彩な香合の中から、ここでは2点をご紹介します。
《交趾狸香合》中国・漳州窯(田坑窯)明時代(16世紀末~17世紀前半)
丸く、愛らしい狸の姿をした香合として、また舶来の貴重な「交趾(こうち)」香合として、大変著名な形物香合の一つです。タヌキとされていますが、実は、東南アジアに生息するサルの可能性もあります。
交趾というのは、ベトナム北部をいう古名です。
《古染付荘子香合》中国・景徳鎮窯(田坑窯)明時代(17世紀前半)
香合を菱に置き、白地に青い蝶一頭を浮文様であらわした清楚な形物香合。このデザインに「荘子」の名があるのは、戦国時代の思想家・荘子(荘周)が蝶になった夢を見た、という著名な故事からきています。

『形物香合相撲』江戸時代・安政2年(1855)刊 ※拡大版の図版
そして茶道具の陶磁香合といえば、俗称「香合番付」こと『形物香合相撲』のランキングがよく知られています。
会場にはもちろん実物も展示されていますが、今回の展示番号を示した拡大版の図版も展示されています。
番付の評価を参考にして、鑑賞してみるのも興味深いことでしょう。
国宝《曜変天目》(稲葉天目)中国・建窯 南宋時代(12~13世紀)※実際の展示風景
なんといっても今回の展覧会で見逃せないのは、国宝《曜変天目》です。高さが70cmの低めの展示台で公開されているので、茶碗内面を広く鑑賞できるように配慮されています。ここはじっくりと、《曜変天目》を味わいたいところです。
静嘉堂文庫美術館はぐるっとパス2017から新規参加の美術館です。
もちろん、行かれたことのある方もあるとは思いますが、まだの方は、この展覧会をきっかけとして思い切って訪れてみるのはいかがでしょうか。



静嘉堂文庫美術館
HP http://www.seikado.or.jp/
「~かおりを飾る~珠玉の香合・香炉展」
会期:2017年6月17日(土)~8月13日(日)
休館日:月曜日
開館時間:10:00~16:30(入館は16:00まで)
観覧料:一般1,000円、大学・高校生700円、中学生以下無料
この展覧会には、一般観覧料金1,000円のところぐるっとパスだけで入場できます。
※このブログ内に掲載している画像の無断転載は禁止します。


★ぐるっとパスは、1冊2000円で80の美術館・博物館などの入場券又は割引券が綴られた便利でお得なチケットブックです。使用開始日から2ヶ月間利用可。
詳細はこちらの公式HPをご覧ください。
 

ぐるっとパスを持って松濤に行こう! 渋谷区立松濤美術館と戸栗美術館を巡る パート2

渋谷駅から徒歩15分程度の松濤地域にはぐるっとパスの参加施設が2つあります。
ひとつは渋谷区立松濤美術館、そしてもうひとつは戸栗美術館です。
今回はこの2つの美術館をご紹介いたします。

渋谷区立松濤美術館では、7月23日(日)まで「クエイ兄弟ーファントム・ミュージアム」展を開催しています。
一般料金1,000円がぐるっとパスだけで入場できます。
戸栗美術館では、9月2日(土)まで「17世紀の古伊万里ー逸品再発見Ⅰー展」が開催されています。
一般料金1,000円がぐるっとパスだけで入場できます。
7月23日(日)までの期間は、松濤地域のこの2つの美術館をめぐるとぐるっとパスのご利用で、2,000円分の入場券として使えます。


まず、渋谷区立松濤美術館からご紹介していきましょう。
前回も説明したとおり、この美術館の設計は、建築家の白井晟一。1981年の10月に開館し、建物が竣工してから37年以上時を経ています。でも、その古さがまたひとつの魅力となっているのです。

スティーンブン・クエイとティモシー・クエイの一卵性双生児のクエイ兄弟は1947年にアメリカ・ペンシルバニア州に生まれました。
クエイ兄弟といえば、代表作として1986年の「ストリート・オブ・クロコダイル」という人形アニメーションがあげられます。
デコール* 《仕立て屋の店内》1986年 映画「ストリート・オブ・クロコダイル」(1986年)より
不思議で幻想的、陰鬱、でもどこか軽やかなユーモアも感じられる数々の傑作を生み出しています。
*デコールとは、箱の中にアニメーション制作の舞台装置、登場する人形などを配置し、再構成した作品。
アニメーションの制作は、少しずつ場所やポーズを変え、1秒のために25コマを撮影する気の遠くなるような作業を繰り返します。その繊細な作業によって、人形たちに生命が吹き込まれ、動き出します。そんな制作の秘密が垣間見られるのがデコールです。
2階が第1会場で、地下1階が第2会場です。
第1会場にはクエイ兄弟の初期のイラストレーション作品が主に展示されています。
他に、2人が影響を受けたポーランドのポスター作品や、学生時代に制作した映画の紹介もされています。
第1会場の展示風景 学生時代のイラストレーション
第1会場の展示風景 ポーランドのポスター
1967年にフィラデルフィア芸術大学(PCA)で開催された「ポーランドのポスター」展を目撃したことが、その後のクエイ兄弟の創作に決定的な影響を与えました。
第1会場の展示風景 学生時代に制作した映画の紹介
第2会場では、数々のアニメーション作品のデコールを中心に展示がされています。
また、これまで紹介される機会の少なかった映像作品や舞台美術の仕事、これまで行った展覧会の様子なども展示されています。
第2会場の展示風景 映像作品の上映
映像作品をダイジェストで上映するコーナーもあり、9作品が上映されています。全部で20分ほどの所要時間です。こちらも興味深く見逃せない内容です。

デコール 《プラハの錬金術師》1984年 
キース・グリフィス監督のドキュメンタリー映画「ヤン・シュヴァンクマイエルの部屋ープラハの映画錬金術師」(1984年)より

約30年前に公開された人形アニメーション映画「ストリート・オブ・クロコダイル」。クエイ兄弟は日本でもカルト的な人気を誇っています。
あなたもその独自の美の世界に触れに美術館を訪れてみませんか?
きっと今までにない新鮮な刺激を受けられることに間違いありません。

渋谷区立松濤美術館から徒歩5分ほどのところに、全国でも珍しい陶磁器専門美術館である戸栗美術館があります。
9月2日(土)まで「17世紀の古伊万里ー逸品再発見Ⅰー展」が開催されています。
17世紀は、古伊万里の歴史の中でも誕生と技術革新により多様な作品が生み出された時代です。
「かたち」や「素地の白」などなど、15のテーマのもとに個性豊かな約70点の作品が並びます。
《染付 楼閣山水文 鉢》 伊万里 江戸時代(17世紀前期)
初期伊万里としては最大級に属する鐔縁の深鉢。
第1展示室に入ると、まずこの大鉢が出迎えてくれます。
《銹釉色絵 家形香炉》 伊万里 江戸時代(17世紀後半)
テーマ7の「かたち-成形技法」で紹介されている2階建ての家屋をかたどった香炉。香を焚くと1階から屋内を通り、屋根の破風から煙が出る仕組み。じっくりと細部まで眺めたい逸品です。
《白磁 桔梗形向付》 伊万里 江戸時代(17世紀後半)
桔梗形の向付。花弁の可憐な様子を見事に表現しています。
《色絵 葡萄鳥文 輪花皿》 伊万里(古九谷様式) 江戸時代(17世紀中期)
周囲を19に区画した輪花形の大皿。器形・意匠ともに所蔵品の中でも特別な優品とのことです。
《色絵 菊花形皿》 伊万里(古九谷様式) 江戸時代(17世紀中期)
3輪の菊花を重ねた器形に縁銹を施した薄手の変形皿。
《色絵 花卉文 水注》 伊万里 江戸時代(17世紀後半)
注口と把手のついた四方形の水注。
《染付 兎形皿》 伊万里 江戸時代(17世紀後半)
土型に押しあて変形させ、さらに染付を用いて身体を丸めた兎を表現した皿。
《色絵 桐亀甲文 輪花皿》 伊万里 江戸時代(17世紀末~18世紀初)
染付の青、上絵の赤・黄・紫・萌黄・浅黄に加えて金彩を施す、贅沢かつ華やかな色遣いの優品。

ここに紹介した数点の作品だけでも、その多彩さが際立っていることにお気づきだと思います。
丁寧な解説文とともに作品を堪能し、あなただけの逸品にめぐり合いに出掛けてみませんか?


■渋谷区立松濤美術館
「クエイ兄弟ーファントム・ミュージアム」展
会期:2017年6月6日(火)~7月23日(日)
休館日:月曜日(祝日の場合は開館、翌日休館)
開館時間:10:00~18:00(入場は17:30まで)
※毎週金曜日は20:00まで(入場は19:30まで)
観覧料:入館料一般1,000円 (大学生800円、高校生500円、小中学生100円、60歳以上500円)
会場:渋谷区立松濤美術館
渋谷区立松濤美術館には、ぐるっとパスで入場できます。
★次回展
「畠中光亨コレクション インドに咲く染と織の華」
会期:2017年8月8日(火)~2017年9月24日(日)
観覧料:入館料一般500円 (大学生400円、高校生250円、小中学生100円、60歳以上250円)


■戸栗美術館
「17世紀の古伊万里ー逸品再発見Ⅰー展」
会期:2017年5月27日(土)~9月2日(土)
休館日:月曜日
    ※毎月第4月曜日はフリートークデーとして開館。
開館時間:10:00~17:00(入場は16:30まで)
    ※毎週金曜日は20:00まで(入場は19:30まで)
観覧料:入館料一般1,000円 (高大学生700円、小中学生400円)
会場:戸栗美術館
戸栗美術館には、ぐるっとパスで入場できます。


★ぐるっとパスは、1冊2,000円で東京を中心とする80の美術館・博物館などの入場券又は割引券がセットになったお得なチケットブックです。使用開始日から2ヶ月間利用可。
詳細はこちらの公式HPをご覧ください。
 

2017年6月20日火曜日

「高畑勲がつくるちひろ展 ようこそ!ちひろの絵のなかへ」「奈良美智がつくる 茂田井武展 夢の旅人」 ちひろ美術館・東京

今回は、西武新宿線上井草駅から徒歩7分のところにあるちひろ美術館・東京をご紹介します。
8月20日(日)まで、「高畑勲がつくるちひろ展 ようこそ!ちひろの絵のなかへ」と「奈良美智がつくる 茂田井武展 夢の旅人」が同時開催中です。
ちひろ美術館・東京にはぐるっとパスで入場できます。
「高畑勲がつくるちひろ展 ようこそ!ちひろの絵のなかへ」
(1階の展示室3・4)
「火垂るの墓」「おもひでぽろぽろ」などのアニメーション映画の監督として知られる高畑勲が、創作のうえで深い洞察を得てきた画家のひとりが、いわさきちひろです。
この展覧会では、高畑の視点からちひろの絵の魅力を新たに発見し、今までにない演出でちひろの絵の世界を体感できます。
展示室3の展示風景
展示室4の展示風景
展示室4の数ある展示作品の中で、3点の絵が拡大されて展示されています。
なぜ、絵を拡大して展示したのか、高畑のことばをご紹介します。
「これはただのアトラクションのつもりではないのです。拡大された絵をもうひとつの「原画」として、まじめに見つめ、対峙していただきたい。すると、いままで見てはいても見えていなかったものが、いろいろと見えてくるはずです。
(中略)…ときには絵の中に入っていけるかもしれません。」
いわさきちひろ 《海とふたりの子ども》1973年 『ぽちのきた海』(玄光社)
この作品は、約6.4倍の大きさで高精細に拡大して展示されています。
展示室4では、絵本『戦火のなかの子どもたち』(岩崎書店)の原画の展示と、3点の拡大された絵の展示と、絵本『あめのひのおるすばん』(玄光社)の原画や少女のイメージや雨の情感を探求した習作やスケッチを展示した3つのパートから構成されています。
いわさきちひろ 《焼け跡の姉弟》1973年
最初の展示は『戦火のなかの子どもたち』の作品が並びます。入ってすぐのところにあるのは防空壕をイメージした展示。
左から いわさきちひろ 《たたずむ少年》1972年 《焼け跡の姉弟》1973年
展示室4の展示風景
奥には絵本『あめのひのおるすばん』の作品が並んでいます。
『あめのひのおるすばん』の作品や少女のイメージや雨の情感を探求した習作やスケッチが並べられた展示
額に入れずにそのままトリミングされていない作品を展示することで、見る人に能動的に見てもらいたいという思いがあるとのことです。
「奈良美智がつくる 茂田井武展 夢の旅人」(展示室1・2)
みなさんは茂田井武(もたいたけし)という画家をご存知でしょうか?
1908年東京日本橋生まれ。戦後日本の復興期に絵本、絵雑誌などの仕事で活躍した童画家です。
現代美術のアーティストとして世界的に活躍する奈良美智も茂田井の絵に心ひかれるひとりです。

今回は、奈良美智が今も「新しい」と感じる茂田井武の作品を選び、展覧会を構成しています。
48歳で早逝した茂田井武と、今に活躍する奈良美智が茂田井の死後約60年を経て、現代にコラボレーションします。

1930年、21歳の春に、茂田井は鞄一つで欧州放浪の旅に出ます。滞在先のパリやジュネーブで、夜毎心に留まった光景や人物、夢の断片を絵日記風に描きためた画集「Parisの破片」や「続・白い十字架」が展示されています。


画帳「Parisの破片」 1931~35年



画帳「続・白い十字架」 1931~35年
この他に、戦時中の日記や、夢から生まれた絵物語、子どもの落書きのある絵など、折々の茂田井の内面が色濃く表れた作品が選ばれています。
『月夜とめがね』(新潮社)装丁 1954年
この作品は小川未明の「野ばら」「月夜とめがね」等の童話17話が収録された童話集の表紙絵として描かれました。
茂田井の描く絵には、その素朴さはもちろんのことですが思わず心ひかれてしまう独特の魅力があります。
ぜひ、みなさんにも奈良美智セレクションの茂田井の作品たちを実際にご自分の目で楽しんでいただきたいです。
ここに茂田井の絵の魅力を表現した奈良美智のことばを引用します。
「茂田井さんの絵をみると
おじいさんの子どものころの写真をひきだしから見つけたような
忘れかけていた宝物に出会ったような感じになる。」
茂田井の晩年の傑作、宮沢賢治の童話『セロ弾きのゴーシュ』(福音館書店)の作品の前で茂田井の作品や近年の自作について語る奈良美智氏。

閑静な住宅街に佇むようにあるちひろ美術館・東京は、一度は訪れてみたい素敵な美術館です。お庭を眺めながらカフェで軽食やお茶をいただくこともできます。
ミュージアムショップも充実していて、思わず記念になにか手に入れて帰りたくなります。

まだ行った事のない方はもちろん、行かれた事のある方も、この見ごたえある展覧会の会期中にぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。
ちひろ美術館・東京にはぐるっとパスで入場できます。


ちひろ美術館・東京
HP http://www.chihiro.jp/tokyo/
「高畑勲がつくるちひろ展 ようこそ!ちひろの絵のなかへ」
「奈良美智がつくる 茂田井武展 夢の旅人」
会期:2017年5月19日(金)~8月20日(日)
休館日:月曜日(祝休日は開館し、翌平日休館)
※8月1日(火)~20日(日)は無休
開館時間:10:00~17:00(入館は閉館の30分前まで)
観覧料:大人800円、高校生以下無料



★ぐるっとパスは、1冊2,000円で東京を中心とする80の美術館・博物館などの入場券又は割引券がセットになったお得なチケットブックです。使用開始日から2ヶ月間利用可。
詳細はこちらの公式HPをご覧ください。